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研究内容

有機薄膜太陽電池の材料開発

研究背景

 太陽から地表面に降り注ぐ光エネルギーは世界の全エネルギー供給量の約67倍に相当し、無尽蔵であることから、化石燃料の枯渇と地球環境問題の顕在化に伴い、急速にその有効活用が検討されてきています。特に、光エネルギーを直接電気エネルギーへ変換できる太陽電池は、化石燃料を用いた発電の代替技術として有望視されており、有機・無機の分野を超えた研究開発が進められています。

 有機薄膜太陽電池は有機低分子・高分子半導体を光電変換層に用いた、新しいタイプの太陽電池です。有機薄膜太陽電池は有機化合物の溶液を塗布することで簡便に作成できます。光電変換層は僅か数100nmの厚さしかないので、材料が極少量で済み、さらにroll to rollプロセスにより大面積を連続的に製造できることから、太陽電池の製造コストを大幅に引き下げる技術として注目を集めています。

当研究室での取り組み

 高分子半導体は、出力電圧の向上と太陽光の効率的な吸収のために、電子供与性部位 (Donor) と電子受容性部位 (Acceptor) を組み合わせてエネルギー準位を調節します。このうち当研究室では特に、Donor部位に対して開発が遅れているAcceptor部位の開発に注力しており、"シンプルかつコンパクトな構造"というコンセプトで研究を行っています。

 例えば、現在注目している複素環化合物である1,3,4-チアジアゾールは、環内に二つのC=N結合を有しており強力な電子求引性基を示します。加えて五員環の3,4位に水素置換基を持たず、最もコンパクトなAcceptor部位の一つです。この構造を主鎖骨格に導入した高分子は高い結晶性と高い正孔移動度
1.2×10-1 [cm2/V/s]を示しました。またn型半導体であるPC61BMとのブレンド膜を用いた有機薄膜太陽電池において、高開放電圧0.80Vおよび3.04%の変換効率を達成しています (Macromolecules 2012, 45, 9046)。 最近では、ビスチアジアゾール骨格を持つ新規π共役高分子を開発することで、8%を超えるエネルギー変換効率を達成しました(Macromolecules 2017, 50, 891)。